Kikroing on the Tree

日記とポートフォリオ

かつては別荘地だった稲毛海岸に思いを馳せて

かつての稲毛海岸は、東京湾に向かって遠浅となり、潮干狩りを生業とする人々越しに富士の霊峰を望むことできていたという。現在では、国道14号線が海岸線に取って変わり、遠浅だった浜は埋め立てられ京葉工業地帯の一角を成している。そんな稲毛海岸に1件の別荘が残っているので、今回訪れてみた。

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その別荘地は、神谷シャトー(現:牛久シャトー)を創業した神谷伝兵衛が大正7年に建てたものであり、現在では国の登録有形文化財に指定されている。日本のワイン王が建てた別荘は、随所随所に意匠が凝らされており、大変見事なものであった。意匠が凝らされているという堅い言葉で表すより遊び心が溢れると言った方が正しいかもしれない。無論、贅を極めた造り、加えて優雅で余裕のある暮らしを垣間見ることができることは言うまでもない。

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光の差し込み具合等々が計算され、ぶどう色に染まる光が見事。このような遊び心が別荘の随所に凝らされており、洒落ている。

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かつては、別荘のすぐ目の前が河岸線となっており、その展望は絶景だったに違いない。そんな景色を楽しむために、廊下に畳が敷かれ、窓には下部にオフセットされている。建物の技巧だけでなく、稲毛海岸を存分に活かす造りとなっていることに感動した。

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来館者が少なかったので、吊し上げ式の網戸の開閉を行なっていただいた。滑車の錘が地下のワインセラーに落ちることで、自動的にこちらの網戸が窓下から窓上にあがり、網戸が閉まるシステムだ。

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頻繁に車が行き交う幹線道路沿いに、このような素晴らしい建物が残っていたなんて、まさに秘密の楽園のようだった。